「なんとなく体調が優れない」
オフィスで働く女性たちの多くが、このような不調を抱えながら日々の業務をこなしています。生理痛やPMS、更年期症状など、女性特有の健康課題は、医療機関での対応が難しい「未病」の状態であることが少なくありません。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点で考え、戦略的に実践することです。特に女性特有の健康課題に対応した健康経営は、企業の生産性向上と女性活躍の両立に大きな効果をもたらします。
女性の健康課題が企業にもたらす影響
世界経済フォーラムが公表した「Global Gender Gap Report 2024」によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位と世界的に見ても男女格差が大きいと評価されています。特に経済分野では、労働参加率や管理的職業従事者の男女比など、あらゆる項目が下位に位置しています。
この背景には、女性特有の健康課題が大きく関わっていると考えられます。経済産業省の調査によれば、女性従業員の約半数が「女性特有の健康課題が原因で、職場で困った経験がある」と回答しているのです。具体的にどのような影響があるのでしょうか?
プレゼンティーイズムによる生産性の低下
出社していても集中力や判断力が低下している状態を「プレゼンティーイズム」と呼びます。欠勤のように目に見える損失ではないため軽視されがちですが、実際には業務効率の低下や判断ミスの増加につながり、企業にとって大きな経済的損失を生み出します。月経痛やPMS、更年期症状などの不調を抱えながら働く女性社員は少なくなく、その結果、本来の力を十分に発揮できていないケースが多いのです。
女性人材の流出リスク
女性特有の健康課題に対する企業の理解や支援が不足していると、優秀な人材が働き続けにくくなるリスクがあります。特に妊娠や出産といったライフイベントの時期は、サポート体制の有無がキャリア継続に大きく影響します。十分な配慮がなければ、離職やキャリア中断につながる可能性もあるのです。企業が女性の健康課題に真摯に向き合うことは、人材流出を防ぐための重要な要素といえます。
健康経営で女性活躍を促進する具体的アプローチ
女性の健康課題に対応した健康経営は、どのように実践すればよいのでしょうか。先進企業の事例から、効果的なアプローチを見ていきましょう。
女性特有の健康課題に配慮した制度づくり
女性が安心して働き続けるためには、体調やライフステージに応じた柔軟な仕組みが大切です。無理をさせないこと、そして「必要な時に自然に使える環境」を整えることが、制度設計のポイントになります。
- 体調に合わせて休める仕組み:生理休暇などを気兼ねなく利用できる職場風土づくり
- 柔軟な働き方:フレックスタイム制や在宅勤務など、働く場所や時間を選べる選択肢の提供
- 検診を受けやすい工夫:婦人科検診などに参加しやすい時間確保や費用のサポート
こうした取り組みは特別なものではなく、日常的に「安心して働ける環境」を整えることにつながります。社員一人ひとりが自分の健康を大切にできることが、結果的に企業全体の活力を高めていきます。
「やさい薬膳」で食からの健康支援
東洋医学に基づく薬膳の知恵と身近な野菜を活用した「やさい薬膳」は、女性の健康課題に対する新しいアプローチとして注目されています。特別な漢方食材ではなく、日常のスーパーで入手できる野菜を使用するため、誰でも無理なく継続できるのが特徴です。
このプログラムでは、以下のような支援が提供されています。
- やさい薬膳体質診断:7つの質問に回答するだけで従業員の体質を可視化
- お悩み相談チャット:日常的な不調に対して薬膳師が個別にアドバイス
- 健康レポートの提供:部署ごとの傾向を分析し、施策立案に活用可能
- オンライン学習:3分動画×40本で、忙しいビジネスパーソンでも学びやすい設計
「なんとなく不調」という医療機関での対応が難しい状態に対して、食からアプローチする点が特徴的です。
女性の健康支援が企業にもたらすメリット
女性の健康支援に積極的に取り組むことで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
生産性の向上とプレゼンティーイズムの解消
女性特有の健康課題に対応することで、「出社していても集中力や判断力が落ちている状態」であるプレゼンティーイズムを解消できます。これにより、女性社員が本来の能力を発揮できるようになり、企業全体の生産性向上につながります。
採用競争力の強化
健康施策への取り組みは、若手・女性を中心とした採用市場で「選ばれる企業」の条件になっています。女性の健康支援に積極的な企業は、優秀な人材を惹きつける魅力を持ち、採用競争で優位に立つことができるのです。
健康経営優良法人認定の取得
女性の健康支援は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」の評価項目にも含まれています。この認定を取得することで、企業のブランドイメージ向上や社会的評価の向上につながります。
先進企業に学ぶ女性の健康支援事例
厚生労働省の女性の健康応援サイトには、女性も男性もともに健康に働ける環境づくりに取り組む企業の実例が多数掲載されています。その中から、参考になる事例をひとつご紹介します。
先進企業に学ぶ女性の健康支援事例:花王株式会社
花王株式会社では、社員の健康を「企業の発展と社会貢献の基盤」と位置づけ、2008年に「花王グループ健康宣言」を掲げて以来、積極的に女性の健康支援に取り組んでいます。特に全国に多数在籍する美容部員を含む女性従業員に向けた実践的な施策が特徴です。
- 女性の健康相談窓口
全国どこからでもメールで相談できる「女性の健康相談窓口」を設置。産業医が直接回答し、症状への対処法や社内制度の紹介を行っています。不妊治療など対面で話しづらい内容も相談しやすく、利用頻度は年々増加しています。
- 婦人科がん検診の受診支援
定期健康診断に婦人科がん検診を組み込み、受診率の向上と早期発見につなげています。治療後の職場復帰に向けた面談や就業配慮も整備し、働き続けられる環境を支援しています。
- 女性の健康セミナー
「妊娠・出産」「がん」「更年期」「生活習慣病」など、ライフステージに応じたテーマで産業医や看護職によるセミナーを定期開催。男性社員にも参加機会を設け、社内全体で女性の健康理解を深める仕組みを作っています。
- イントラネット情報発信「Women’s News」
季節や年代ごとに合わせたテーマを3か月に一度配信。社員が自身の体調やライフステージに合わせて学べる仕組みを提供し、正しい知識の普及と風土醸成を進めています。
花王は「女性の健康支援を全社的に取り組むことが、社員一人ひとりの安心と企業全体の持続的成長につながる」という考え方を実践しており、制度と風土づくりを両立させた代表的な事例といえます。
参考:https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/kao-co.ltd.html
これからの健康経営と女性活躍の未来
健康経営と女性活躍の関係は、今後ますます重要性を増していくでしょう。少子高齢化が進む日本において、女性の労働力は貴重な経営資源です。その能力を最大限に引き出すためには、健康面からのサポートが不可欠なのです。
企業が女性の健康課題に真摯に向き合い、適切な支援を行うことは、単なる福利厚生の枠を超えた経営戦略となります。女性が健康で活き活きと働ける環境づくりは、企業の持続的な成長と競争力強化につながるのです。
あなたの会社でも、明日から始められる女性の健康支援があるはずです。小さな一歩から、健康経営と女性活躍の好循環を生み出していきましょう。健康経営が変える女性活躍の未来は、すでに始まっています。